Fata.シャーロック10月5日弾痕とホットチョコレート Ⅳ◆チョコレートはぬるく溶けて 銃声が響いたのと、僕が勢いよく彼を押しのけて床を転がったのが同時だった。が、状況はどうも思っていたのと違った。すぐに立ち上がった僕とは違い、彼は床にうつ伏せになったまま、もうピクリとも動かなかった。後頭部には赤黒い穴が開いていた。...
Fata.シャーロック10月5日弾痕とホットチョコレート Ⅲ◆招かれざる客 シャーロックは扉の向こうで生返事をしたきり、とうとう三階から降りて来なかったけど、マフィン君と僕はパンやチーズやワイン、それからスーパーで買って来た野菜を持ち寄ってシチューを作り、ささやかな夕食会を開いた。...
Fata.シャーロック10月5日弾痕とホットチョコレート Ⅱ◆物騒なバレンタイン そこで穴を塞ぐことは諦め、僕は次なる手段に出た。 まずホームセンターに行って、DIY用の機材を揃えた。そして穴のバリ――壁紙の焼け焦げた部分や千切れたり裂けたりした部分――をそぎ落として綺麗に削り、整えた。ついでに壁をペンキで塗り直した。とにかくも...
Fata.シャーロック10月5日弾痕とホットチョコレート探偵がくれるものはいつだって、血と謀略の味がする—— 現代英国。陽気な諜報員ロビンは、隣室に住む殺し屋シャーロックの突然の暴挙や嫌がらせのようにしか思えないMI6からの任務命令に腹を立てていた。仕返しに奔走する中、英国では「御社のチョコレートに毒を入れた」と企業を強請る脅迫...
Fata.シャーロック1月27日ハート家・危機一髪【注】この話は「恋はシュールなDestiny」本編の13話「レディには優しく?」の途中、バジルがパリの病院の待合室で紳士に「警察の素晴らしさ」を伝えようとして語ったもの。本編を読んでからでないと全く意味が分からないかも…… ◆警察の素晴らしさを語る...
Fata.シャーロック1月26日知恵の輪あれこれ2「May I ask you again?《もう一度お聞きしても?》」五秒くらいおいて、ロビンさんがそう言った。 ロビンさんは笑顔だけど、細い目は全く笑っていなかった。みるみる内に顔色も変わって行く。まるで紙のように白く。ホームズさんは何でもないように煙草に火なんか点けて...
Fata.シャーロック1月25日知恵の輪あれこれリーハの親友マイクは衝動買いの常習犯。 モール爺さん、机クリーナー、天気予報グラス……そんな変なおもちゃを買うだけ買ってリーハに譲る。 リーハはおもちゃ達がすぐに飽きられるのが可哀想で、供養のつもりで遊ぶのが常となっている。 ...
Fata.シャーロック1月24日【9】Oh! Crazy Halloween!「何それ」 ロビンの当然の質問を聞き過ごし、シャーロックは黙って草刈り機の紐を引いた。一度、二度、三度……かなり年季の入った機器なので六度目でようやくエンジンがかかった。ドゥルルルル……。不規則な振動をシャーロックの腕は直に捕らえる。 「ねえ、何それって聞いてるんだけど」...
Fata.シャーロック1月24日【8】Oh! Crazy Halloween!◆この世には触れてはいけないものがある 「すぐに出るよ、シャーロック!」 「よし、と言いたい所だが、今からタクシーを呼ぶのか? 遅過ぎるだろ」 ロビンはリーハを抱いたまま、息せき切って玄関ポーチを駆け抜ける。コンマ一秒の遅れもなくシャーロックが後に続く。二人の長脚が起こす風...
Fata.シャーロック1月24日【7】Oh! Crazy Halloween!◆医者が先か、祈りが先か 「おい、すぐに隠すぞ」とシャーロックが小声で囁いた。 「いや、もう間に合わないよ」ロビンは首を振った。 「仕方がないから、マフィン君はたった今、心臓発作か何か僕らの知らない大変な病気の発作で倒れたことにしよう。それで『今から知り合いの医者の家に連れ...