Fata.シャーロック10月5日弾痕とホットチョコレート Ⅳ◆チョコレートはぬるく溶けて 銃声が響いたのと、僕が勢いよく彼を押しのけて床を転がったのが同時だった。が、状況はどうも思っていたのと違った。すぐに立ち上がった僕とは違い、彼は床にうつ伏せになったまま、もうピクリとも動かなかった。後頭部には赤黒い穴が開いていた。...
Fata.シャーロック10月5日弾痕とホットチョコレート Ⅲ◆招かれざる客 シャーロックは扉の向こうで生返事をしたきり、とうとう三階から降りて来なかったけど、マフィン君と僕はパンやチーズやワイン、それからスーパーで買って来た野菜を持ち寄ってシチューを作り、ささやかな夕食会を開いた。...
Fata.シャーロック10月5日弾痕とホットチョコレート Ⅱ◆物騒なバレンタイン そこで穴を塞ぐことは諦め、僕は次なる手段に出た。 まずホームセンターに行って、DIY用の機材を揃えた。そして穴のバリ――壁紙の焼け焦げた部分や千切れたり裂けたりした部分――をそぎ落として綺麗に削り、整えた。ついでに壁をペンキで塗り直した。とにかくも...
Fata.シャーロック10月5日弾痕とホットチョコレート探偵がくれるものはいつだって、血と謀略の味がする—— 現代英国。陽気な諜報員ロビンは、隣室に住む殺し屋シャーロックの突然の暴挙や嫌がらせのようにしか思えないMI6からの任務命令に腹を立てていた。仕返しに奔走する中、英国では「御社のチョコレートに毒を入れた」と企業を強請る脅迫...
Fata.シャーロック1月15日罪悪感【火星から来た塩昆布シリーズ③】 昨日を背負って明日へ歩く。哀を愛へと変えるため。私はさすらう塩昆布。 心の闇を直視することで手放そうという試み。 創作という海に投げ出された一人の人間が、「溺れるものか」と藁をつかんだり、それさえもすっぽ抜けてしまって絶望したり、「それも人...
Fata.シャーロック1月15日嫉妬という魔物【火星から来た塩昆布シリーズ②】 昨日を背負って明日へ歩く。哀を愛へと変えるため。私はさすらう塩昆布。 心の闇を直視することで手放そうという試み。 創作という海に投げ出された一人の人間が、「溺れるものか」と藁をつかんだり、それさえもすっぽ抜けてしまって絶望したり、「それも人...
Fata.シャーロック1月15日火星から来た塩昆布【火星から来た塩昆布シリーズ①】 昨日を背負って明日へ歩く。哀を愛へと変えるため。私はさすらう塩昆布。 心の闇を直視することで手放そうという試み。 創作という海に投げ出された一人の人間が、「溺れるものか」と藁をつかんだり、それさえもすっぽ抜けてしまって絶望したり、「それも人...
Fata.シャーロック2023年9月3日フェイト・ルーレットロンドンの不穏な霧を映すが如く冷めた瞳の探偵は、一人の男に危険なゲームを持ちかける。 「弾は一発、助かるチャンスは五回もある。たかがロシアン・ルーレットだ」 ——どれほど足掻き逃れようとも、死すべき運命は変えられない。愚かな者に残された術は、自ら逃したように見えるチャンスを...
Fata.シャーロック2023年5月22日翳りゆく部屋「俺は穏やかな百年など望まない。百年分の一瞬があればいい。のちの日々が死ぬくらいなら——」 凍える僕を振り返りもせず、探偵は雨を見つめている。もう戻らぬ人を思いながら。 *カクヨムにて公開中 A man never knows how to say goodbye....
Fata.シャーロック2022年8月31日あじさいの彼厚い雲に覆われて、空はどこまでも灰色をしていた。 六月になってからずっと、ずっと。 昨日も今日も雨が降る。延々と降り続く。きっと明日も明後日も。 晴れ間のない人生に疲れ果て、死に場所を探す「私」が出会ったのは、とても優しい「彼」でした。 絵師・ナルヒトさんとのコラボ作です。...