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執筆者の写真Fata.シャーロック

嫉妬という魔物

【火星から来た塩昆布シリーズ②】

昨日を背負って明日へ歩く。哀を愛へと変えるため。私はさすらう塩昆布。

心の闇を直視することで手放そうという試み。

創作という海に投げ出された一人の人間が、「溺れるものか」と藁をつかんだり、それさえもすっぽ抜けてしまって絶望したり、「それも人生か」と星を眺めて達観したりしているような、そんな心の動きを言葉にしました。良かったらどうぞ。





 僕は嫉妬をしている。どうしようもないくらいに。

 あの人を見ていると、自分がまるで駄目な気がして来る。


「あの人は人気者だ」

「あの人は価値がある」

「でも自分は……」


 そんな風にね。


 でも冷静になって考えてみると、決してそんなことはない。

 僕もそこそこの暮らしを送っている。夢も希望もいっぱいだ。満足している。

 そもそも人はそれぞれの背景を持つものだ。「良い」とか「悪い」とか、そんな簡単な物差しで測れるものではない。


 ところが突然、心は魔に堕ちる。

 あの人が羨ましくてたまらなくなる。あの人の持つものが欲しい……いや、あの人が不幸に鳴ればいいとさえ思ってしまう。それが苦しい。辛い。地獄だ。


 あの人を見ないようにすればいいって? そんなの分かってる。

 でもこちらが離れようとすると、何故かあの人の方から楽しそうに近づいて来るんだ。理由もないのに振り切ることなんて出来ないさ。表面上は友達なんだから。


 僕は一体どうしたらいいんだろう。

 聖人は無理でも、善人ではありたいと昔から思って来た。でも、いつの間にかこんなに醜い感情を抱いてしまっている。考え方を変える、生き方を変える……色々試してはいるけれど、平穏は束の間だ。忘れた頃にぶり返す。


 この魔物は、僕の知らない所で生まれているんだ。


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