#3 リーハは不運な魔法使い
更新日:1月26日
トイレはどこ?! 先輩はどこ?!
パーティーが終わった後、僕を含む新入生は皆、それぞれの寮の監督生に連れられて、これからのホグワーツでの七年間を過ごす寮へ行くことになった。
初めて見るグリフィンドールの談話室は広かった! それに気持ちを掻き立てられるような、赤と黄色の凛々しいライオンの飾りがあちこちにある!
嬉しいな。一番良さそうだと思っていた寮に入れたなんて。僕はワクワクしながら辺りを見回した。
ところで、肝心の寝室のことなんだけど、今年はグリフィンドールの新入生の数がちょっと部屋数に合わなかったらしいんだ。なので、本当は新入生二人ずつの相部屋になるところを、僕だけ三人での相部屋になってしまった。先生達は魔法で拡張しようとしていたんだけど、ポルターガイストのピーブスが大騒ぎをしたせいで上手く行かなかったらしい。
まぁ、その分広い部屋を割り当てられたので、狭くはない。それに、僕と一緒にこの部屋を使うのは新入生の誰かじゃなくて、さっきの先輩達……シャーロックさんとロビンさんだということだから、逆に嬉しかった。
「お前さんと相部屋になったのは良い。別に良いけどな、何でロビンまで一緒なんだよ。最悪だ」
「そのセリフは全力でお返しするよ、シャーロック。僕も最悪だ」なんて、先輩達はぶつくさ言ってたけど。
明日から始まる授業の準備と荷物の整理をした後、僕は暖かな気持ちでベットに寝っ転がった。先輩達はとうにベットに入って眠っていたので、部屋はとても静かだった。
僕は毛布から顔を出して窓の外を見ながら、明日から僕が過ごすであろう幸せな日々の事や、どうしたらあの素敵なユウミさんにお近づきになれるんだろう……ということを考えていた。
ああ、嬉しい。やばいな。胸がワクワクで張り裂けそう。
これじゃ朝まで眠れないかもとも思ったけど、それは杞憂だった。僕はいつの間にか夢の世界へ落ちていた。
ところが、である!
夜中過ぎ、僕は急にトイレに行きたくなって目が覚めた。
寝る前にもちゃんと行ったのに、パーティーでカボチャジュースを飲み過ぎたせいかも知れない。膀胱がパンパンに膨らんで我慢が出来ないくらいだ。
だけど困った、僕は寮のそばにあったはずのトイレの場所をはっきりと覚えていない。
一人で真っ暗なホグワーツをうろうろするのは嫌だな……。僕はマグル生まれだし、ホグワーツに来るまでは普通に普通のロンドンで暮らしていたからさ、やっぱり怖いんだ。魔法界では当たり前のこととは言え、暗闇の中でゴーストに遭遇するかも知れないなんてゾッとする。 うん、「面倒臭いやつ」って迷惑がられるかも知れないけど、先輩にトイレの場所を教えてもらおう……。
僕はそう思って二人のベットに近づいた。
二人は一様に、頭まで毛布を被ってぐっすり寝ている。
ごめんなさい、先輩……。
僕はシャーロックさんのベットの毛布をゆっくりとめくった。
すると驚いた事に、布団の中にはクッションが詰め込まれていただけで、シャーロックさんの姿はなかった。
え? 何でいないの?
僕は呆気に取られて立ちすくんだ。
もしかして、シャーロックさんもトイレに行きたくなったのか?
でもクッションはまるで人が眠っているかのような形で毛布の下に詰め込まれていたし、どう考えても……トイレ以外の何かをする為に寮を抜け出しているとしか思えない。だけど夜中に学校を徘徊するのは、確か校則違反じゃなかった? ヤバくない??
「ロ、ロビンさん……!」
僕は慌てて、シャーロックさんがいないことを伝えようとロビンさんを起こしにかかった。
ところが事態は想像した以上に深刻だった。なんとロビンさんまでもが、毛布にクッションを詰め込んでこの部屋からいなくなっていたのだ!
た、大変だ! こんな時はどうしたら良いんだ? 先生を呼びに行くべきなのか? でも、もしそれで二人が退学処分になっちゃったらどうしよう! 絶対恨まれる!!
ああ、でもまずトイレだ! まずトイレに行かないと僕がやばい!
僕は寮から飛び出し、とりあえずパーティーの時に行った、大広間のそばにあるトイレを目指してホグワーツを駆け抜けた。
幾つもの階段を上り、廊下を曲がる。だけどあんまり急いでいたので、途中、派手に転んで床に額をぶつけてしまった。運悪く、床は何か(多分砂)でザラザラしていたので、どうやら少し切ってしまったらしい。触った手には血が付いた。
「大丈夫かい、ぼうや」壁にかかった絵画の中の人が、眠そうな目をして僕を見た。
「だ、大丈夫です、ありがとうございます……」僕はズキンズキン痛む額を片手で押さえながら、そう答えた。
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