#1 リーハは不運な魔法使い
更新日:1月26日
リーハ・H・マフィーは「魔法使いのたまご」だ。
十歳になった彼は、ついに念願の魔法学校ホグワーツへの入学を果たす。
けれども同級生ハリー・ポッターの存在感が圧倒的過ぎて、同じ寮生からほぼ空気の扱いを受けてしまう。
しかし、彼には「いつか立派な癒者になる」という強い意志があった。
ほんの数名だが、温かく歓迎してくれる先輩もいた。初めての恋もした!
ハッピーDAYSが始まるかと思われたが……
仲良くなった先輩二人が実は「闇祓い」だったことから騒動に巻き込まれて行く。
【作者より】
もしも「僕のクレイジーDAYS」のキャラたちが、ハリー・ポッターの世界にいたら?
本作はそんな作者の意味不明な発想から生まれた番外編(ハリポタパロディ)です。2023年11月発売のBL本「嵌められたスパイ」のおまけ本として纏めさせて頂きました。こちらでは五話までの公開となります。続きは紙の本でよろしくお願いします!
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僕は魔法使いのたまご!
僕はリーハ・H・マフィー。魔法使いのたまごだ。
でももうすぐ、たまごなんかじゃない、本当の魔法使いになれる……。
だって今日は、僕がずっと前から入りたいと思っていた、魔法学校ホグワーツの入学式の日なんだ!
キングスクロス駅の9¾番線ホームから魔法界へ滑り込む不思議な汽車を降りると、僕の目の前には黒々とした広い湖が広がっていた。その向こうにそびえ立つ僕達の学び舎ホグワーツは、とっても大きくて神秘的なお城だ! 想像していたものより何倍も凄い。僕の胸はもう爆発しそうなほどドキドキしている。
不意にジャポン、としぶきをあげて妖精が水面に顔を出した。
彼は船に乗り込んだ僕達新入生を見て、にこりと笑った。それだけじゃなく「ヤーレンソーランヨー」と歌を歌い始めた。歓迎してくれているのかもしれない。何だか幸せな気持ちになって、僕はキラキラと星の瞬く空を仰いだ。一年前に亡くなった大好きな伯父さんもきっとそこから僕を見つめ返していると思う。
大好きな伯父さん、「魔法なんか危ないからダメ! アンタは普通の学校に通いなさい!」って言ってた母さんを説得してくれてありがとう。
僕は頑張るよ。いっぱいいっぱい勉強して、伯父さんとの約束通り、絶対に立派な癒者になってみせるからね!
ホグワーツに着くと、僕達新入生はまず、大広間へ通された。
これからホグワーツでの暮らし……いや今後の僕の人生を左右すると言っても良いくらい大事な、組み分けの儀式が始まる。
勇猛果敢なグリフィンドール、頭脳明晰レイブンクロー、勤倹力行のハッフルパフ、狡猾老獪のスリザリン。
四つの寮はどれも魅力的だけど、ダンブルドア校長はグリフィンドール出身だっていうから、僕もグリフィンドールに入りたいなって思う。
出来ればスリザリンは避けたい。だってあそこ出身の人達には悪い噂が多いし、さっきホグワーツで見かけたスリザリン生は、顔つきからしてあんまり良い人じゃなさそうだもの。
儀式の間中、僕はずっと心配していた。もしスリザリンになっちゃったらどうしよう……。
赤毛の人や賢そうな女の子が呼ばれ、組み分け帽子に「グリフィンドーール!」と叫ばれていた時には、心底羨ましいなと思った。情けないことに、僕の足は緊張でガクガクしている。
ああ早く終わって欲しいな……。でも、Rから始まる名前だからか、なかなか呼ばれない。
だけど、突然「ハリー・ポッター」という名前が耳に飛び込んで来て、僕の緊張は吹っ飛んだ。
え、嘘、「ハリー・ポッター」って、まさかあのハリーさん?! まさか僕の同級生なの?!
ハリーさんと言えば、魔法界では超有名人。何でも昔、魔法界を大混乱の底に突き落とした悪の大魔法使い「例のあの人」をやっつけ、無力化してしまったのだとか。しかも、ハリーさんはその時、まだ赤ん坊だったというのだから驚きだ。きっと、もの凄く魔力の強い人なんだろう。
彼は組み分けにちょっと時間がかかっていたようだったけど、僕の思った通り「グリフィンドーール!」と言われていた。
「やった! あのハリーを取ったぞ!」と、グリフィンドールの席は大騒ぎ。校長先生も手を叩き、喜んでいるようだった。
さて、次は誰かな……
「リーハ・マフィー!」
えっ、僕かよ。
僕は慌てて立ち上がり、前に出て、帽子をかぶった。
でもさ……。有名人の後だったから仕方ないんだけどさ、組み分け帽子が僕をハッフルパフにするか否かで悩んだ挙句に僕の希望を聞き入れて「グリフィンドール!」と叫んでくれて、小躍りしながら赤とオレンジのテーブルに向かった時、皆はまだハリー君に夢中だった。
念願叶って嬉しいけど……。少し寂しい気持ちで、僕はそっとテーブルの隅の席に着いた。
でも、その時だった。
両隣から「よろしくね!」「よろしくな!」と大きな拍手をもらったのは。
「グリフィンドールへ、ようこそ」
そう言ってくれたのは、白銀の髪に青い瞳をした、女性かと思うくらいに伸びやかな手足の凄く綺麗な人だった。
「僕の名前はロビン。僕は知ってたよ、君は一見するとハッフルパフ生だけど、実は僕らと同じくらいクレイジーな気質の持ち主だってことをね」
「そ、そうなんですか……?」クレイジーって言うのはちょっと違う気が……
「組み分け帽子が間違えることはない。俺の推理もな」
そう言ったのは、ロビンさんと対象的な黒髪と火星のような赤い瞳をした、長身痩躯のめちゃくちゃ格好良い人だった。
「俺はシャーロックだ。お前さんは新入生達の中で一番姿勢が良かった。強靱な精神の持ち主だということは俺が保証しよう」
「え……」
そうかなあ、と僕は首をかしげた。姿勢が良ければ強靱ってことになるの……?
そりゃ僕は、英国軍の医者だった伯父さんに(マグルだけど)、姿勢とか言葉遣いとか、凄く厳しく躾けられたけどさ……
その時、「皆さん! 新しいグリフィンドール生は、ハリーポッターさんだけじゃありませんよ!」と、手をパンパン叩きながら立ち上がった人がいた。
おや、と思って首を伸ばすと、僕は凄まじくショックを受けた。だってその人は、まるで天使みたいに可愛らしくて美しい、豊かな金髪に紫色の瞳をした、最高に素敵な女性だったんだ!!
「私はグリフィンドールの監督生をしています、ユウミ・ベランジェールです。リーハさん、グリフィンドールへようこそ! これから卒業までの数年間、皆で力を合わせ、心を一つに活動して参りましょう!」
な、なんと! 声までもが美しい!!
僕は返事をするのも忘れて、ユウミさんを凝視していた。
ああ、なんてこった……僕は一目惚れなんて信じていなかったのに。
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