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執筆者の写真Fata.シャーロック

【4】Oh! Crazy Halloween!




◆お楽しみタイム


 「言われなくてもシャーロックは煙草をやめないよ」ロビンさんはクスクス笑いながら立ち上がった。

「それはそうと。そろそろお楽しみタイムにしよう」

「お楽しみタイム? 何ですかそれ?」

「プレゼントだよ、プレゼント。今日は街で色々買い物してね。君たちにぴったりなものを見つけて来たんだ」


 ロビンさんはさっきの紙袋の口を広げ、何やらごそごそやり出した。

 プレゼントって何だろう? 僕の心臓はやおらドキドキして来た。クリスマスでもないのに何かをもらえるのって嬉しい。ロビンさんは優しいな。


「あった、あった! はい、これはシャーロックに」


 ロビンさんは朗らかに言って、茶色い何かをホームズさんに向かって放り投げた。軽く受け止めたホームズさんは一瞬、きょとんとした顔でそれを見つめていたけれど、たちまち凄い表情になって大声を上げた。


「誰が付けるかこんなもん!!」


 ホームズさんはまるでブーメランを投げるかように何のためらいもなくぶん投げる。茶色い何かは、目にもとまらぬ早さで部屋の隅に飛んでった。

 ロビンさんは「えー、似合うと思ったのに」と言いながら、大笑いしている。


「な、何だったんですか、今のは」

「これだよ、ほら。かわいいだろう。絶対に似合うよねえ」


 ロビンさんが拾い上げたのをよく見ると、それは狼男の扮装用の大きな耳と尻尾のセットだった。



「えっとですね……」僕は言葉を失くす。


 そりゃあね、似合うと思いますよ。この狼耳のカチューシャとふわふわの尻尾をホームズさんが付けたりしたら、格好良さとかわいさが相まって凄いことになる。だけど、絶対に実現しないよ。ホームズさんはこう見えて照れ屋なんだ。しかも「かわいい」とか言ってたら、ますます嫌がるに決まってるじゃないか。

 いや、何でそんなに目を輝かせてるのロビンさん……。ドSなの? そうなの? どちらにしろ、喧嘩売ってるとしか思えない……。


「僕はこれの他に、ワイルドなベストや半ズボンも用意してたんだけど、ダメかな」

「うるさい黙れ消えろ」

「ダメそうだね。じゃあ、次はマフィン君の番だ」


 ロビンさんはまた紙袋に向き直り、しばらくゴソゴソやった後、白地にホウキの絵が描いてある大きな巾着袋を取り上げた。

 何だろう、これ? 僕は首をかしげる。受け取った袋は思ったよりも軽かった。それに、柔らかくてふわふわしてる。


「開けてごらん」とロビンさんは言った。

「それも服だよ。マフィン君にはもう、これしかないって思ったんだ」


 うわあ、嫌な予感……。ホームズさんのを選んだセンスで「ぴったり」と呼ばれても……。

 寒気を感じながら袋の口を広げると、真っ黒なベルベット生地のフード付きローブが出て来た。それと、白い襟付きシャツ。イエローとオレンジのボーダー柄ネクタイ。同じ柄のマフラー。木で出来た魔法の杖。丸眼鏡。稲妻形の傷のシール……。




「僕はハリー・ポッターじゃないんですけど!!」


 全てを袋に詰め直し、僕はそれをぶん投げた。袋はぶざまに飛び跳ねながら、ソファの裏へ飛んで行く。ロビンさんはそれを追いながら「似合うと思ったのに!」と叫び、ホームズさんは吹き出した。


 冗談じゃないよ!! いい加減覚えてよ!! 僕の名前はリーハだよ!! 

 リーハ・H・マフィー!!


「おい、ファーストネームがハリーではないということはさっき知ったが、お前さんのファミリーネームはポッターだろう? マフィーなんて初耳だぞ」

「え、僕はファーストネームがハリーだと思ってたよ?」


 二人とも息を呑んでそう言ってくるので、僕はいっそ殴ってやろうかと思った。

 どれだけ一緒に暮らしてると思ってるんだ! アンタら馬鹿か! 頭良いけど馬鹿だろ!!


「ゴメン、ゴメン」ロビンさんは僕の肩を叩きながら、「これでも食べて機嫌を直してよ」と言った。その手の中には、ハロウィンの絵が描かれた、飴やクッキーやチョコの詰め合わせ袋がある。


「これさ、商店街のおばさんが子供用にってお店の前で配ってたんだよね。だから僕も『家に子供がいるんです』って言ってもらって来たんだ。君のこと思い出したからさ」

「ロビンさん……」僕は今にも爆発しそうな怒りを抑えて、ゆっくりと言った。

「僕は成人してるんですよ!」

「え? あれ、そうだっけ? だって君は凄く小柄……」

「十五や十三じゃなかったか?」

 

 もーやだ!!

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