#2 リーハは不運な魔法使い
更新日:1月26日
先輩たちは何か変
素敵な人と巡り会えたことで、僕はこれまでにないほどテンションが上がっていた。新入生歓迎パーティーは生きていて良かったと思うくらいに素晴らしく楽しかった。
だけど……両隣の先輩達は、何か変なんだ。会話の内容がおかしいんだ。
「おい、ロビン! 俺の皿にバナナを置くな!」
「うるさいな、君だって僕の皿にベーコンを置いたくせに」
「は? 俺がバナナを食えなくなったのはお前のせいなんだが? って言うかお前、ベーコンが嫌いとかどうかしてるだろ」
「え、君のせいだけど? 君が僕の事をアズカバンに入れなきゃ、僕はベーコンを嫌いにならずに済んだんだよ」
「お前の方こそ俺を死喰い人パーティに騙し討ちで出席させたという過去を忘れるな」
「そんなの全然大した事ないだろうに。黒魔術好きのお年寄り達に君を会わせてあげようと思っただけじゃないか。挨拶一つで済む話だよ」
「お前はその“挨拶”が『こんにちは』で済むもんだと思ってたのか?」
「いや全然思ってなかったけど? “挨拶”の“あ”は“アバダ”の“ア”に決まってるし? というか、それと君のバナナ嫌いがどう繋がるのさ」
「死喰い人の内の一人は大のバナナ好きだったらしい。俺がパーティーに飛び込んだ時、テーブルの上には山ほど皮が捨ててあったんだ。 それが魔法合戦が始まるや否やひっくり返ってな。バナナの皮が床中に飛び散った」
「へえ」
「それに躓いて何人も滑るわ滑るわ、階段を転がったりテーブルの角に頭を打ったりして、もれなくあの世行きさ。俺が手を下すまでもなく」
「ほお。バナナの呪いかね」
「気味が悪いだろ」
「怖がりだね」
「何だとこの野郎」
「だって君はさ、僕がアズカバンでどんな目にあったか知らないだろう? あのド性格悪魔女のベラトリックス・レストレンジときたらさ、看守をシメ落として杖を手に入れた途端、手当たり次第に魔法をかけて人だろうが物だろうが構わずベーコン焼きにしてたんだよ。ま、僕の魔法で最後には彼女がベーコンになったんだけど」
「惜しいな」
「はい?」
「お前もベーコンになっちまえば最高のハッピーエンドだったんだが」
「シャーロック、世の中にはね、言っていいことと言っちゃいけないことがあるんだよ」
睨み合う二人。険悪な雰囲気になってきたので、「あ、あの」と僕は慌てて割りこんだ。先輩達の会話には気になる単語が頻出していたので、どういうことなのかを聞きたかったんだ。
「死喰い人とか、ベラトリックス・レストレンジって、あの……」
「死喰い人を知らないのか? お前達がよく『例のあの人』って言ってる男がいるだろ。昔、悪の大魔法使いとか言われてたヴォルデモードとかいうオッサンの事だが。そのオッサンの取り巻きだった奴らを死喰い人って言うんだ」
「そ、それは知ってます」
「なら何故聞いた」シャーロックさんは片眉を上げる。
「えっとですね……」
さっきのお話は冗談ですよね、本当に死喰い人とかを先輩達が倒したってわけじゃないですよねって聞こうとしたら、
「ベラトリックス・レストレンジについて知りたかったの?」とロビンさんが身を乗り出した。
「あのおばさんはね、死喰い人の中でも特に強かったんだ。ヴォルちゃんの片腕だったって話だよ」
「……」
いいや、別に聞かなくても。冗談だったに決まってるし。
それにしても、例のあの人のことを堂々と名前呼びしているなんて、本当に怖いもの知らずな先輩達だなあ。さすがグリフィンドール。僕も見習わないといけないな。
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