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執筆者の写真Fata.シャーロック

#5 リーハは不運な魔法使い

更新日:1月26日


フラグを全部折った先輩たち


「なかなかやるな……」


 長い沈黙の後、クィレル先生……いや、クィレル先生の後頭部に付いていた顔がクックックと笑い出した。


「小賢しいガキ共よ……。何故だ、何故わしがこの男に憑いていると分かったのだ?」

「ホグワーツのそばの禁じられた森で、ユニコーンが殺されていたからですよ」ロビンさんが言った。

「ユニコーンは非常に純粋な、天使のような生き物です。だから殺せば障りがある。それは魔法界にいる誰もが知っていること」

「しかし、ユニコーンの血には不老長寿の効能がある」


 シャーロックさんは、真っ直ぐにグロテスクな顔を見据えて言葉を続けた。


「そこで私達は思った訳です。永遠に呪われるという多大なリスクを犯してまで、不老長寿にしがみつく魔法使いなど少ない。いるとしたら、かつて魔法界を支配し、なおかつ死によって力を失うことを恐れ、分霊箱を幾つも作っていた貴方しかないと」


 ぶ、分霊箱?! 僕は呆気に取られて口をぽかんと開けた。



 それってあれじゃん、殺されても簡単に死なないように、魂を分断してどこかに保存しとくっていうあれじゃん! でも、その魔法を発動させるには確か、誰かを殺して犠牲にしなきゃいけないんだったよね!? わああ、待って待って、それは一番やばくて怖い魔法じゃん! それを幾つも作ったわけ、例のあの人は!!


 ……て言うか、先輩達は何でそれを知ってるの!?

 知ってたらやばいんじゃない?!


 僕がそう思っていると、やはりクィレル先生の後頭部の顔から、「な、何だと?! 何故わしの分霊箱の事を……!」 カミナリのような声が飛び、僕はハラハラしながら柱にしがみついた。

「何故貴様らが知っているのだ!!」

 しかしシャーロックさん達はそれを恐れる様子はなく、


「おやおや、そんなもの、貴方の過去を調べればすぐに分かる事ですよ?」

「あれで隠していたつもりですか?」


 むしろ挑発するように「呆れた」という表情で言葉を発した。


「貴方の元部下であるルシウス・マルフォイが館に保管していた日記や、貴方の母親が残した蘇りの石付きの指輪、スリザリンのロケット、そしてハッフルパフのカップやレイブンクローの髪飾りは全て、私やロビンが見つけ、ホグワーツの秘密の部屋に生息していたバジリスクを倒した後、その牙で破壊しました」

「な、何だと……!!」

「詰めが甘いんですよ、貴方は」

「ご自分の魂のかけらを、ホグワーツの創立者である魔法使い達の品になんかに託すからですよ」


 僕は言葉もない。

 先輩達ってなんなの?

 本当に僕と同じ学校の生徒なの?

 魔法界中の魔女や魔法使いを全部束にしたよりも強くて怖いんじゃない?

 例のあの人もびっくりして顔を引き攣らせてるじゃんよ。


 しかし、驚くのはまだ早かった。

 シャーロックさんは尚もひょうひょうとした表情で、「私達がやったのはそれだけじゃないんです。一応、今後の危険を回避する為に、とあるサーカスに飼われていたヘビのナギニやアズカバンにいた貴方の腹心の部下達も全員、あの世へ送っておきました」と言ったのだ。


 マジかよ。パーティーの時のあれは、ただのほら話じゃなかったってこと?! こわ!


「そうそう、今日、このホグワーツに入学して来た赤毛の少年のペットのネズミも怪しかったので、捕らえて校長の前で正体を明かさせましたよ。それからどうなったか、知りたいですか?」


 彼は自ら窓の外へ身を投げて死にました……と言って、ロビンさんは笑った。


「つまり、貴方は本当の孤立無援というわけです。クィレル先生に取り憑き、新任の教師としてホグワーツにやって来たのは、ニコラス・フラメルがダンブルドア校長に預けた賢者の石を強奪する予定だったからなのでしょうけど、あいにくでしたねぇ」

「な、な、!」

「まぁ、返って楽になったようなものですよ」


 シャーロックさんの言葉に、「ど、どういう意味だ」と言って例のあの人は充血した目をそば立てた。


「だって、このホグワーツはダンブルドアの聖域ですからね。最も校長は今、どこかに出かけているようですが」

「良かったですね。あさましいその姿でユニコーンに永遠に呪われながら生き続けるという事はなさそうですよ」


 おっそろし……と、僕は柱の影で身を縮めた。

 例のあの人が、じゃない。徹底的に相手を追い詰めているシャーロックさん達が怖かったのだ。僕だったらとっくに心折れてるよ……。


 だけど、いつまでも例のあの人に同情してはいられなかった。

 例のあの人は「むうぅ……おのれ、よくもよくも……!」と唸った後、魔法界史上最悪の魔法と呼ばれている死の呪文を二人に向けて放ったのだ。


「アバダ・ケダブラ!」


 直撃したら最後、どんな人間でも瞬く間に死の淵へ落ちる最凶の緑の閃光が、闇の中を突っ切った。

 

 やめてーーーーっ! 


 僕は驚きと恐怖で叫びそうになった。

 でもその瞬間、シャーロックさんとロビンさんは動いた。



◆お試し版はここで終わりです◆

続きは紙の本でよろしくお願いします!



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